佐賀大学 理工学部電気エネルギー工学コース、電子デバイス工学コース パワー半導体研究室(嘉数研究室)

5年後、10年後の実用化を目指す
パワー半導体
デバイス研究

何を学ぶ?研究内容

「ダイヤモンド」、「酸化ガリウム」という新しい半導体材料のパワー半導体デバイスが実現し、社会の様々な装置やシステムで、シリコン半導体を置き換えることができれば、装置やシステムで使われる消費電力を社会全体で格段に低減させることができます。
わたしたちは、そのような「ダイヤモンド」、「酸化ガリウム」半導体デバイスの「不純物ドーピング」や「ウエファ―」といった基盤となる半導体技術の確立を、結晶や電子の物理の探求をしながら、実用化する研究を行っています。また再生可能エネルギーの代表である「太陽光発電所(メガソーラー)」のシステムの信頼性に関する研究も行っています。

3つのチームに分かれて研究を進めています

ダイヤモンド半導体デバイス
ダイヤモンドは、パワーや高周波性能に優れた究極の半導体です。大口径ウエファ―を目指した結晶成長技術と結晶成長の機構を解明します。またクリーンルームでフォトリソグラフィー技術を使い、半導体デバイスを作製し、デバイス特性や高周波特性を測定します。
酸化ガリウム半導体デバイス
酸化ガリウムは、近年、急速に進展しているパワー半導体です。EFG法やVB法で育成したバルク結晶、HVPE法で成長したエピタキシャル薄膜結晶の構造を、シンクロトロン光のX線トポグラフィー装置で欠陥を調べ、その結晶上に作製したアンペア級デバイスを測定し、結晶欠陥がデバイスに与える影響を調べます。
太陽光発電システム
実際に稼働している太陽光発電システムの発電量が気象によって変動するメカニズムや、太陽光発電モジュールで突然起こる故障原因の解明、地面から生えて太陽光の影になる雑草が発電量に与える影響やメカニズムの解明を行います。

何が身につく?研究のメリット

1最先端の技術、知識

研究室では、装置を使って、デバイスを作製し、測定する実験が主体になります。本研究室にある実験装置は、大企業の研究所に遜色のない最新の装置ばかりです(大企業にもないオリジナルの装置もある)。これらを実際に使いこなすことで、企業で研究開発する技術を身につけることができます。

研究室にはいる前には、知識がないことを心配するかもしれません。しかし研究を進めていきながら、先輩が教えてくれた文献や教科書を読んだり、ディスカッションしたり、卒業時には自然に最先端の知識が身についているはずです。毎週、研究室の勉強会もあります。

2国際感覚と英語力

本研究室は、研究成果を世界に積極的に情報発信し、世界から応募してくる留学生を積極的に受け入れています。東南アジアだけでなく、アフリカからも来ています。そのため、研究会は日本語と英語の両方で行います。普段、留学生と英語でコミュニケーションすることもあります。

また、本研究室には、米国や欧州から著名な先生が、頻繁に訪問され、打ち合わせや講演も英語で行います。国際会議で発表する学生もいます。このようにして、卒業したときには、英語力と国際感覚が自然に身についています。

3未知への挑戦

研究の楽しさは、未知の課題に挑戦することです。本研究室の研究テーマは、世界最先端で、1年後の研究結果は未知なのです。そのため研究では、まず、持っている知識や文献で報告されている内容から、結果を予測して実験を始めます。実験も考えられるベストな方法を考えて行います。うまくいかなかった場合、次の作戦を考えて進めます。しかし、その繰り返しが、大きなブレークスルー(画期的な発見)につながります。そこに研究の楽しさがあります。

何をめざす?卒業生の進路

大学院生

  • 三菱電機
  • NTTファシリティーズ (2名)
  • NTTファシリティーズ九州
  • ノベルクリスタルテクノロジー
  • 富士通九州ネットワークテクノロジーズ
  • NOK
  • 日本触媒
  • 九電工

学部生

  • 三菱電機
  • 日本電産
  • きんでん
  • 西日本プラント
  • 三井三池製作所
  • 三菱電機ビルテクノサービス
  • アサヒコーポレーション
  • 橋本商会
  • 九州防衛局
  • 九電工
  • DKSHジャパン
  • 上野精機
  • 第一精工
  • 九州大大学院(2名)

どんな大学生活を過ごす?学生生活

現役先輩インタビュー①

高谷 亮太さん
(博士前期課程2年在学中)

「嘉数研究室を選んだ理由」

私は元々材料系や半導体の分野に興味をもっていました。様々な研究室を検討しましたが、実際に研究室を訪問して実験装置も豊富に備わっていることがわかり、自分の興味とやってみたい研究が重なったので、この研究室を選びました。とても雰囲気は暖かく、すぐになじむことができました。研究室での生活も先生や先輩方がすごく親身になってくれるので環境も整っており研究も楽しく、過ごしやすいです。

「研究について」

ダイヤモンドは半導体の中で非常に優れた物性値を持っていますが、実用化にはまだ至っていません。問題として高品質で大面積・低コストのダイヤモンド基板がないことが挙げられます。そこで私はこの課題の解決に繋げるために、異なる基板上でダイヤモンド結晶を成長させたヘテロエピタキシャルダイヤモンドの初期成長のメカニズムの研究や欠陥評価を行い、ダイヤモンドデバイスの実現を目指しています。

「休日の過ごし方」

週末はアルバイトをして研究との両立を行っています。何も予定がない日は行ったことがない飲食店を開拓してみたり、友達と通話しながらゲームをしたりとラフな感じで過ごしています。長期休みは旅行にも行ったりします。高校までバスケットボールをしていましたが大学で運動をする機会があまりないので、重い腰を上げて筋トレをしていくことが今後の課題です。

「将来について」

将来は企業の技術者として活躍したいと思っており、会社や様々なコミュニティの中で信頼される人間になりたいです。そのために大学時代で経験して培ったものを社会にしっかり役立てられるように一日を大切にしていきたいです。まずは研究室にも後輩が入ってくるので、たくさんの事を教えてあげていきたいと思っています。

「後輩の学生へのメッセージ」

どこの研究室にいくか迷っている学生もいらっしゃると思います。私もそうでした。嘉数研究室は自分で計画して行動に起こすための環境が整っています。そのため自主性・計画性を大きく伸ばすことができます。研究内容のレベルも高く、結果がでれば大きな学会で発表できるので自分のキャリアも積むことができます。半導体に興味がある方は気軽に研究室を訪問してください。

卒業した先輩インタビュー①

桝谷 聡士さん
ノベルクリスタルテクノロジー
(2019年博士後期課程修了)
桝谷 聡士

「嘉数研究室を選んだ理由」

学部生の頃から半導体の分野に進みたいと思っていました。特に、これまでダイヤモンドというと宝石のイメージしかありませんでしたが、それを半導体応用するという事に興味を持ったのでこの研究室を選びました。また、自分が配属されるときは嘉数先生が佐賀大に赴任してすぐで、先輩もほとんどいませんでしたし、装置も十分なかった状態だったので、立ち上げを含め自分で一からやってみたいと思っていました。

「研究について」

半導体の基板として用いるダイヤモンド単結晶の合成と欠陥評価の研究を行っています。実際に用いられる半導体基板は完璧な原子配列をしているわけではなく、局所的な乱れ(格子欠陥)を持っています。半導体において、結晶成長やデバイス作製の過程で導入される格子欠陥は、デバイスの性能に影響するため重要な問題です。そのためこれらの基礎物性や機構の解明を行い、各種デバイスの性能向上を目指しています。

「休日の過ごし方」

家でずっとゴロゴロするのが苦手で、いつもどこかへ必ず出掛けます。車を運転するのが好きなので、ドライブでいろいろなところに行きます。基本的に、彼女や友達と買い物に行ったり、海や公園などでピクニックをしたり、美味しいものを求めていろいろなお店を周ったりしています。九州にも有名な温泉やテーマパークや観光地などがたくさんありますので、旅行もよく行きます。

「将来について」

今研究を行っている分野の道に進めたらと思っています。結晶欠陥の研究もやってみると面白くて、はまります。ダイヤモンド半導体に関しても、まだまだ課題が多いので、実現に向けて何か貢献出来ればと思います。

「後輩の学生へのメッセージ」

自分の将来の事をしっかり考えて、行動しましょう。 まずは計画を立ててみることが大切だと思います。

卒業した先輩インタビュー②

田中 裕之さん
NTTファシリティーズ九州
(2016年博士前期課程修了)
田中 裕之

「どんな仕事をしていますか」

私が働いているNTTファシリティーズは、NTTのエネルギー部門と建築部門が融合し、次世代の新しい価値を生む新会社として1992年に設立しました。私は現在、100年以上続いている通信を止めないという使命の元、NTT通信設備に対応した電源装置や、緊急時のバックアップ電源となるエンジンや蓄電池の保守業務を主に行っています。その他、太陽光発電所のパネルや発電設備の点検・保守作業などの通信設備以外の事業にも携わっています。

「嘉数研究室での研究・生活」

嘉数研究室では、太陽光発電所における、太陽電池モジュールの不具合原因の調査を行っていました。この時、NTTファシリティーズ九州の設備である吉野ヶ里メガソーラー発電所の区画をお借りして、共同研究という形でかかわっていました。この研究をきっかけに、NTTファシリティーズのメガソーラー発電所の保有数の多さや、長年の研究実績を知り、会社に興味を持ち、就職しました。

「休日の過ごし方」

休日は、予定がなければ比較的家でゆっくりしていることが多いです。ただ、現在は宮崎に住んでいますので、宮崎の観光地を巡ったり、おいしい食事処を探してみたりしています。この間は、大学時代のソフトテニスサークルの後輩が、OB大会を実施してくれたので、久しぶりにソフトテニスをしてリフレッシュが出来ました。今年はもう少し運動することが目標です。

「将来について」

将来は、会社の中で後輩社員を正しく指導していける存在になりたいと考えています。次年度には私にも後輩社員ができ、将来は社員を指導する立場に立ちます。その際、現在ご指頂いている先輩方のように指導できるよう、多くの事業に携わっていきたいです。

「後輩の学生へのメッセージ」

嘉数研究室は、全国的にも高いレベルで研究を行っています。半導体デバイスの作製、結晶成長から、様々な半導体の特性研究、半導体で構成されている太陽電池の研究など、幅広い分野を研究しています。半導体に興味のある方には是非、お勧めしたい研究室です。

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