Plasma Electronics Laboratory, Saga University

プラズマエレクトロニクス研究室

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プラズマプロセスとは?

a.プラズマCVD法

電子やイオンからなるプラズマ状態を利用して、反応性ガス、例えば、SiH4ガスを導入すると、プラズマの中で以下のような反応が生じます。分解された分子や原子(ラジカル)が基板に堆積し、機能性を持つ薄膜を形成できます。このような技術をプラズマを用いた化学的気相合成法 (Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:PECVD法)と呼びます。
特に、平行平板を用いた容量結合型高周波プラズマCVD法が広く利用されているます。しかしながら、プラズマ密度が低いため、成膜速度が遅く、その生産性が低いことが課題となっています。

 

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b.スパッタ法

材料の板(ターゲット)に負の電圧を加えて、プラズマ状態を作ると、イオンが材料ターゲットに衝突し、その運動エネルギーによって、 材料内の原子を弾き出します。その弾き出された粒子(スパッタ粒子と呼ぶ)を基板に堆積させて薄膜を形成できます。 このような技術をスパッタリング(スパッタ)法と呼びます。生産性を高めるために、磁石を組み合わせたマグネトロンスパッタ法が広く利用されています。 しかしながら、プラズマがドーナツ状または、レーストラック状に不均一に生成されるため、材料ターゲットの利用率が20-30%と低いことが課題となっています。 特に、スマートフォンやタッチパネルなどのITO透明導電膜にもマグネトロンスパッタ法が利用されていますが、ITOのIn(インジウム)が希少金属のため、その有効利用が求められています。
本研究では、永久磁石の設置方法を工夫することで、従来にないマグネトロン放電による均一高速薄膜合成装置の研究開発を進めています。

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プラズマ処理装置の開発

a.ダイヤモンドに近い硬さを持つ薄膜を合成するプラズマ処理装置

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DLC(Diamond Like Carbon、ダイヤモンドに近い硬さを持つ炭素)膜は,高硬度, 低摩擦係数,高熱伝導度,高電気絶縁性等の優れた特性を持っており、 機械部品の耐摩耗化・長寿命化,駆動部の滑り安さ向上の用途等に広く用いられています。炭化水素系ガス(メタンガス等)を原料としてDLC膜を作成するプラズマCVD法は、 他のプロセスに比べ蒸着速度が早く表面が滑らかな膜を作成できます。一般的なDLC成膜速度は、 シリコンなどの金属基板上で 8~15 [nm/min] です。しかしながら、一般的に用いられています 高周波CCP(容量結合型放電)方式では、製膜速度が低いことが課題となっています。
そこで、本研究では、通常の高周波電極にマルチにホロー穴を形成することで、 プラズマ密度を向上させる方法を提案している。更に、製膜基板にバイアスすることにより、 これまでの成果として、約 200 [nm/min] の高速製膜を実現しています。

b.銅薄膜合成のための磁石固定式ターゲット完全利用マグネトロンスパッタ装置の開発

半導体内の銅薄膜合成方法には、高速製膜が可能であることから、永久磁石を用いたドーナツ状のマグネトロンスパッタ装置が広く利用されています。 しかしながら、マグネトロンプラズマスパッタ装置には、薄膜材料ターゲットの利用率が20-30%程度であり、資源を有効利用できない課題が残されています。
本研究室では、磁石の形状や配置を最適化することにより、ターゲット利用率を向上させる新方式スパッタ装置の開発を行っています。 図に、最近開発した単極磁場配置型の新しいスパッタ装置の磁石配置(右図)とプラズマ発光の様子(下図)をそれぞれ示します。配置(b)により、ターゲットの利用率が約60%に向上しました。 現在、更なる利用率の向上を目指して、鋭意研究を進めております。

また、スパッタリング材料の有効利用のために開発した回転型レーストラック型マグネトロスパッタ装置として、産業技術総合研究所との連携大学院共同研究で実施してまとめ、国際的な学術雑誌Surface & Coating Technologyに 掲載されました学術論文がカナダのリサーチ社Advances in Engineeringに紹介されました。

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c.透明導電膜高効率合成のための磁石回転式ターゲット完全利用マグネトロンスパッタ装置の開発

スマートフォンやタブレット型端末などのタッチパネルには、透明導電膜が使われています。透明導電膜には、ITO(酸化インジウムスズ)膜が広く利用されており、その合成には、マグネトロンスパッタ装置が広く利用されている。しかしながら、ITOに含まれているInインジウムは希少金属であるため、ターゲットの利用率の向上が求められている。ここでは、磁石を回転させてターゲット利用率を向上させる方法について紹介します。
下図には、形状が迷路型になっているマグネトロンプラズマを示しています。それを回転させることにより、ターゲット利用率は60%以上を達成しています。                     

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下図には、ITOの代替材料として期待されているAZO(アルミニウム混合酸化亜鉛)膜を合成した結果です。10^-4Ωcmオーダーの抵抗率を実現し、可視光域で光透過率90%以上を達成し、(002)面に配向しており、結晶性の良い薄膜が合成できます。                                

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d.高速プラズマ処理装置の開発

高周波やマイクロ波を用いたプラズマ発生方法は、比較的低圧力で容易にプラズマ生成が可能であることから、 プラズマプロセシング用のプラズマ源として、広く用いられています。
本研究室では、これまで、高周波 プラズマの中で、容量結合型プラズマの放電維持機構やプラズマ構造について、 詳細に研究を行ってきた。また、磁界を用いた電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ中の荷電粒子の挙動や 永久磁石を用いた大直径高密度プラズマ源の開発も手がけてきました。現在は、新たな手法を検討し、新しい高速プラズマ処理装置の開発を目指しています。
下図は、左から、平板の場合、高周波電極上にリング状ホロー溝を形成させた場合(300mTorr、500mTorr)の水素プラズマの発光の様子です。 リング溝内に強い発光が観測されています。即ち、高密度プラズマが生成されています。尚、教員がこれまでの研究成果をまとめた著書「高密度高周波容量結合型プラズマの物理(英語版)」をIntechopenのOpenaccessにてダウロードできます。

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